自分のお店を持つことがこれまでのゴールだったというハンナ。そしてここは彼女にとってクリエイティブな作業を行える特別なスペースでもあります。「ここなら私の製品と自分自身をお客様にプレゼンテーションできます」。以前は靴職人のワークショップだったというこの建物。室内を愛情たっぷりに改築して完成したこのアトリエは、人形の家のようにこじんまりと、まるでハンナのファッションが目指す、エレガンス、ピュア、ミニマリストを象徴しているかのよう。店に入ると左には最新コレクションが並び、天井を見上げると何列にも木製の靴型が吊り下がっています。ハンナはこの店を靴職人の友達、ロッテ・ポストとシェアしているのです。

ハンナに会うと、幸せな気分になります。それは、彼女がおしゃれだから、という理由だけではなく、親しみやすさ、妖精のような美しさ、そして彼女の中に秘められた能力が、彼女という人物からにじみ出てくるからなのかもしれません。ハンナのように物静かな人が、どうやってファッション業界で注目を集めていくことができたのでしょう？

「静かな音でも音楽はできますよね。時間はもっとかかるかもしれないけど、それだけに持続性があると思うんです。私のことを知ってもらうと、皆さん納得してくれてもう一度来てくれるんです。大声で叫ぶより、こっちのほうが効果は大きいと思うんです」。

ハンナのスタイルって？「アンダーステートメントって言うとぴったりかな。第一印象は控えめなんだけど、じっくり見るとエレガント。静かな音の方が印象って大きいものですよ」。彼女にとってファッションはその人物を認識すること。その周りにあるものはバックグラウンド、だと言います。「目立つことなく、目を惹くようなファッションでありたいと思っています」、とまとめます。そんな言葉の中には、ハンナという人物像がくっきりと浮かび上がってきます。ハンナは目立つことなく人の目を惹くような女性だからです。

ウェディングドレスは花嫁とたっぷりコミュニケーションを取りながら半年ぐらいの時間をかけて制作するそうです。「美容院でおしゃべりするのと似てるかな」と笑います。難しいお客さんとは？「何を求めているか自分でもはっきりわかっていないお客様は難しいですね」とはっきり答えてくれました。彼女自身は自分が求めていることをいつもしっかりと把握していたようです。「わかりすぎてたかな、今でもそうですよ」。

高校生の時にすでに、大学入学資格試験の代わりにドレスメーカーの修業をしようと決意したハンナ。「どの方向に進んでいきたいかわかっていたから」。過酷なファッション業界で生き延びていくためには、こんな意思の強さは必要不可欠なのかもしれません。「継続的に目標に向かって努力していく力って必要ですね。これをこうしなさい、って言ってくれる人なんていませんからね。大変だけど、それと同時にそんな点が魅力なのではないでしょうか」。

30歳になる彼女は、ドイツ国内でも初めて開業したオーガニックショップの側で育ちました。その子供時代は彼女に大きな影響を与えたようです。ハンナはいつも自分の行動が環境に与える影響を意識しながら生活している、と言います。「持続性、それからものが一体どこから来ているのかは、私にとってとても大切なものです。いつも、私が求めるキャラクターがある、それでも有害物質が全くない、正しく生産された素材を見つけようと努力しています。白い有機コットンを買うのは簡単ですが、表面とか構造とか、ちょっと違うキャラクターとか、そういうものを探し始めると選択肢は限られてくるんですよ」。

ハンナにとってものがどのように生産されているかは重要なテーマであり、品質は一目でわかると言います。「私っていつも一番高い製品に手が伸びちゃうんです。職人の技って必ず価格に反映されていますからね。最近は、良いものを少なめに買う方がいいな、って思っています」。

「一日中立ちっぱなしだから、サンダルだと楽なんですよ。Birkenstockって、シンプルで素朴な感じがあるから長年愛されているんじゃないですか？私もそんなところが大好き」。それにBirkenstockは、彼女のデザインとコーディネートしやすいと言います。「特別な素材や表面を使った服に、カジュアルなタッチを添えてくれるから」。

最後に、身なりが良いとはどんなことかを伺ってみました。「良質のジーンズとか、いい靴とか、高品質の、他の洋服と合わせ易いアイテムには高い値段を払ってもいいと思うんです。違いが生まれるところですから」。

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